遊泳舎の本棚 010『ふたりは同時に親になる ~産後の「ずれ」の処方箋~』

20代も折り返しを過ぎると、人生について真剣に考えることが多くなります。20歳くらいの頃は、目の前の仕事を片付けて、一日を乗り切ること。それをひたすら繰り返して、一週間をやり過ごすこと。その日の晩酌や、週末の飲み会さえ無事に迎えることができれば、そこから先のことは考えない。10年先はもとより、1年先のことだって想像もできませんでした。

周囲の友人が結婚や出産の報告をしていても、気にも留めることはありません。なぜなら、「彼らが特別早いだけだ」と思っていたからです。結婚はまだしも、子育てなんて……ペットも飼ったことのない自分に、人間の世話なんて、できるはずがない、と。

年齢を重ねるにつれ、そんな子育てへの恐怖は少しずつ薄れてきたものの、まだ子供のいない自分にとって、それが未知の世界であることには変わりありません。そんな「親になったことのない」今だからこそ、出会えてよかったと思える一冊をご紹介します。

本書に綴られているのは、子育てによって変化する環境と、具体的にそれをどう対処すればよいかという方法。そして、初めて親になった夫婦や、これから親になる夫婦のための、心構えの指針です。たとえば育児の現場は、会社に例えるとどんなにブラックな状態なのか。初めて母親になった女性には、世界がどんな風に見え、どんな精神状態に陥ってしまうのか。父親の目に、その様子はどんな風に映るのか。

決して男女どちらかに味方して、「お父さんはもっと育児を手伝いましょう」「お母さんは、お父さんの気持ちも分かってあげましょう」そんな風に説くだけの本ではありません。両者の立場を冷静に分析し、精神的・肉体的にこういう負担があるから、それがこういう行動に繋がって、結果的に揉める原因になる……ということが、論理的に説明されています。

週末の夜、赤ちゃんの機嫌を見定めながら大慌てでの食事が終わりました。ひと息つく間もなく、「はぁ」と大きなため息をつきながら立ち上がり、食器を片付けにかかるママ。なんとなく居心地が悪そうなパパはおもむろに「手伝おうか?」と声をかけましたが、ママの反応は微妙です。
この「手伝おうか?」という表現は、夫婦の「ずれ」を象徴する代表的なNGワードです。

第4章 ふたりは同時に親になる① 育児初年度の「傾向と対策」より


「え?なんで?」と思った方もいるかもしれません。実際、私も何も考えずに生きていたら、同じ場面で、同じセリフを口にしていたかもしれません。「ふたりは同時に親になる」というタイトルが何を意味しているのか、よく考えれば分かることではあるのですが。

夫婦のトラブルは、何より未然に防ぐことが大切です。もちろん失敗してもやり直すことはできますが、何かある度に揉めていては、やがてお互いに疲弊してしまうでしょう。だからこそ、「冷静に読める今、この本に出会えてよかった」と感じました。本書に書かれているマインドを持っておけば、子育てという未知の世界にも立ち向かえるような気がしたからです。まさに、タイトルの通り、本書は夫婦生活の「ずれ」をうまく調整してくれる、処方箋のような一冊といえます。

(文・望月竜馬

ふたりは同時に親になる ~産後の「ずれ」の処方箋~
著:狩野さやか
発行:猿江商會
ISBN:978-4-908260-08-7

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