みなさんは自分の住んでいる町をどのくらい知っていますか?
実は同じ地域の中でもさまざまな特徴があって、くらべてみると見えてくるものがあります。中でも京都は数多くの寺社や歴史ある建造物が立ち並んでいる、魅力ある町です。
京都の地理、歴史、食、風景、建物など様々な事柄を「くらべる」ことで京都の新たな魅力や見方の発見を試みたという本書。各項目は4ページで構成されており、まず見開きいっぱいで左右のページに1枚ずつ掲載された写真により、ひと目でくらべることができます。そこから後半の2ページでさらに文章で深掘りしていく構成になっています。
世の中には既存の写真素材を使った本も数多く存在しますが、本書はカメラマンの山出高士氏が京都を回って撮影した撮り下ろし写真が使われています。これにより構図や雰囲気にまとまりが生まれ、読者が「くらべる」ときに純度が高く写真に向き合うことができると感じました。
また、各項目400文字程度の解説は、老若男女が読みやすく分かりやすい文章で書かれています。執筆を担当された岡部敬史氏は京都生まれで東京在住とのこと。京都を内と外から体験してきたからこそ見えてきた「京都の魅力」が存分に詰まっている点も見逃せません。
京都に生まれた私は、現在、東京で暮らしていますが、離れたからこそ気づいた京都の面白さがたくさんありました。京都ってこんな見方もできるんだ――。そんな発見の一冊になりましたら嬉しく思います。
「はじめに」より
京都をテーマにした本なので、読後に京都に足を運んでみたくなるのはもちろんですが、私はもう一つ別の感情も抱きました。それは故郷に対するノスタルジックな思いです。私自身も地元を離れたあと、田舎の空気が澄んでいること、夏の雨や陽射しが強いこと、魚介類が美味しいことなど、その魅力や特徴にたくさん気がつきました。
京都を知れて、京都に足を運びたくなるだけじゃなく、読者一人ひとりが自分の故郷の魅力に気づけるかもしれない、そんな一冊です。
(文・中村徹)
『くらべる京都』
文:岡部敬史
写真:山出高士
発行:東京書籍
ISBN:978-4-487-81335-3