遊泳舎の本棚033『思い出すと心がざわつく こわれた関係のなおし方』

誰もが一度くらいは家族や友達と大きな喧嘩をしたことがあるのではないでしょうか。何かのきっかけで仲直りができることもあれば、残念ながらそのまま気まずい関係が続いてしまうこともあります。物が壊れたら修理に出したり買い直したりすれば済みますが、人間関係となると、簡単には行きません。

私も、昔は仲の良かった友人と、些細なすれ違いによって疎遠になってしまった経験があります。数年ぶりに連絡を取ってみても、お互いにどこかぎこちないまま終わってしまい、大人になることの寂しさをしみじみと痛感したものでした。人との出会いはよく「縁」や「巡り合わせ」などの言葉で表されます。つまり、人生のどこかのタイミングで出会い、どこかのタイミングで別れるのは自然なことで、自分の意思ではどうしようもないのだと思うようにしていました。

それはある意味、半分正解で、半分不正解なのかもしれません。

本書のタイトルにも書かれている「思い出すと心がざわつく」という表現はまさに的確。そんな心を優しくなだめてくれるような一冊です。水元さきのさんの涼しげなイラストと「心の奥にひっかかっている人はいませんか?」というコピーに惹かれ、思わず手にとってしまいました。

本書はあなたに、何がなんでも過去にしがみついているようにおすすめするものではありません。けれども、思い違いやいさかいのせいで、こわれた人間関係にけじめをつけずにいるとしたら、今一度立ち止まって、関係修復のための手立てがないか考え直してみるだけの意味はあるでしょう。

(P4「はじめに」より)


本書は決して、無理やり関係を修復しようと試みる本ではありません。まずは心の傷に一度しっかりと向き合って、自分の感情の理由を知り、相手の気持ちを深く考えるきっかけを持ちます。その上で関係を取り戻す方法を探るのか、あるいは手放してしまうのか、いずれにしろ前に進むための一歩を踏み出すのです。


目次から自分の状況に合ったページだけを拾い集めてみるのもいいですし、巻末の自己診断チェックから試してみるのもいいでしょう。どんなネガティブな感情にも、必ず理由があります。その理由を分からないままにしておくと、心のざわざわは続いてしまいます。複雑な問題であっても、絡まった糸をほどくように、少しずつ少しずつ向き合っていけば、今よりきっと楽になれるはず。本書はそんな悩める人々のための、お守りのような存在です。

(文・望月竜馬

思い出すと心がざわつく こわれた関係のなおし方
著:イルセ・サン
訳:浦谷計子
発行:Discover21
ISBN:978-4-7993-2588-9

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