第7回「大切な家族を亡くし、大きな喪失感を抱えたまま立ち直れずにいます。」(回答者:乙姫)

恋愛や仕事、人間関係、心と体……。そんな現代人が抱える悩みに答えるのは、物語の世界から飛び出してきた“おひめさま”たち。「人生の主役」をつとめるアナタに、ヒロインとして物語の世界を生き抜いたお姫様が生き方のヒントを教えてくれる連載『57人のおひめさま 一問一答カウンセリング 迷えるアナタのお悩み相談室』。最終回となる今回も、家族にまつわるお悩みです。


回答者:乙姫姫
国:日本/出典:『御伽草子』

(あらすじ)
浦島太郎が逃がしてやった亀は、数日後に乙姫に化けて浜に流れ着く。「竜宮城に帰してほしい」と懇願された浦島太郎は龍宮城に行き、乙姫と結婚して3年暮らしたが、残してきた両親が心配になる。乙姫から「絶対に開けないで」と玉手箱を渡され、浜に帰ると700年が過ぎていた。絶望した浦島太郎が箱を開けると一気に老人になり、さらに鶴になって蓬莱山へ飛び立った。乙姫も亀になり、浦島太郎を追って消えた。


お悩み:大切な家族を亡くし、大きな喪失感を抱えたまま立ち直れずにいます。

乙姫の回答:目をそらさず事実を受け入れて。逃げずに悲しめば、必ず前を向けるわ。

喪失感を抱いたまま立ち直れないのは、亡くなった事実を受け止められないから。どれだけ願っても、大切な人は帰ってこない。その事実は変えられないわ。人は自分でコントロールできない物事に直面すると、自分の無力さを痛感して気力を失ってしまうの。

でもね、何かを変えようと思ったら、まず事実を受け入れないといけないの。立ち直る最初の一歩は「大切な人はもういない」って認めること。きっと今は、頭でわかっていても心が拒絶しているのね。受け入れて認めるのが怖いから、目をそらしているの。でも、そうやって逃げている限り立ち直れないわ。つらいけど、時間をかけて目の前の事実と向き合って、悲しみや苦しみを味わい尽くして、健全にあきらめないと前を向けないの。

傷はゆっくりと、でも確実に癒えていくものよ。もちろん、明日すぐに立ち直れるわけじゃない。それでも、今日よりは明日、明日よりは明後日、悲しみが和らいでいくわ。これからの日々で一番悲しいのは今。明日は今日よりも絶対良くなるの。劇的な変化を期待せず、じっくり自分の感情と向き合って、少しずつ受け入れて。苦しいのも、つらいのも、悲しいのも、それだけ良い時間を過ごせたからよ。綺麗事みたいだけど、ホントよ。

浦島太郎が700年後の浜に戻ったとき「自分のことを知っている人がだれもいなくて、まるで死人のような気持ちになった」と言っていたの。体が生きていても、心が殺されてしまうことだってあるのよ。その逆もあるわ。相手がいなくなっても、相手との思い出はなくならない。肉体が滅んでも、あなたの中にその人の存在が息づいていれば、心は亡くならないの。あなたが前を向いて生きている限り、その人は鮮やかに存在し続けるわ。

「自分ではどうにもできない」という思い込みを手放して。そして、悲しみを乗り越えるために「どんな行動をすれば少しでも前に進めるか」を具体的に考えて

苦しさは生きている証。あなたはどんな苦しみからも絶対に立ち直れるわ。前を向いて生きることが最高のはなむけよ。今すぐ笑えとは言わないから、旅立ったご家族に笑顔を見せられるように、前を向いてね。

 肉体が死んでも、心は亡くならない。前を向いて生きることが一番のはなむけよ。 

連載は今回が最終回となります。書籍版では、他にもさまざまなお悩みに57人のお姫様が答えています!
57人のおひめさま 一問一答カウンセリング 迷えるアナタのお悩み相談室

文:秋カヲリ/絵:momomosparkle
定価:本体1600円+税
判型:四六判変形(ソフトカバー)
頁数:240P
発売日:2021年7月16日
ISBN:978-4-909842-08-4

《Kindleにて無料お試し版を配信中!》


秋カヲリ(あき かおり)
1990年、茨城県生まれ。東京女子大卒、都内在住。ADHDのパンセクシャルで、作家・ライター・コピーライター・心理カウンセラーとして活動する一児の母。恋愛依存、育児鬱を経験し、心理学を生命線にして今に至る。ADHDゆえに受験勉強や会社員生活などのルーティーンが極端に苦手で、ITベンチャー・広告代理店・化粧品メーカー・社史制作会社を転々とするが、いずれも1年前後で退社した会社員不適合者。感情や思考を整理できる執筆が精神安定剤で、幼少期から偏愛し生業にする。女の生きづらさやADHDの不適合感とうまく付き合うため心理カウンセリングを実践し、現代女性のゆらぐ心を支えるコラムを多数執筆している。
Twitter: @hagiwriter
Instagram: @akikawori
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momomosparkle(もももすぱーくる)
ハッピーでポップなイラストが特徴のバイリンガルイラストレーター・漫画家・エッセイスト。小さな頃から多様な文化に触れながら育ち、カリフォルニアでアートとアニメーションを学んだ後、女子美術大学を卒業。人と話すのが大好きで、かわいいものやおいしいもの、新しいものに目がない THE・てんびん座。著書に『ハピドラ! マンガで紹介 気分ぶちアゲ海外ドラマ』(柏書房)がある。挿絵やウェブ漫画のほか、ドラマレビューやコラムも人気。
Twitter: @momomosparkle
Instagram: @momomosparkleofficial

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