遊泳舎の本棚 004『酔いながら考える』

あけましておめでとうございます。2018年もあっという間でしたね。年末年始、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

お正月といえば、親戚で集まって朝っぱらから宴会を始めるのが通例でした。三が日は、酔っぱらいが大手を振って歩ける貴重な期間なのです。それでなくても、忘年会や新年会が続いて、肝臓が悲鳴を上げそうなこの季節。旧年もまたお酒の失敗を繰り返した酔いどれ編集者の私が、自戒も込めてご紹介したいのがこの『酔いながら考える』です。

『歩きながら考える』というリトルプレスの別冊に位置づけられ、写真やエッセイ、古典文学からの引用などが散りばめられた一冊。お酒というテーマを扱った本はすでに市場に溢れかえっていますが、「酔い」にスポットを当てた本は、なかなか珍しいのではないでしょうか。

真夜中の街を小窓から覗いているような、可愛らしい正方形の佇まい。装丁に使われているぼやけた灯りのような写真は、酔っぱらいの目に映る街の風景によく似ています。

そして表紙にさりげなく配置された「『時』に虐げられる奴隷になりたくないなら、絶え間なくお酔いなさい!」という強烈なコピー。一度でも酔っぱらった経験のある人なら、この本を手に取りたくならない理由がありません。

本を開くと、まず巻頭に現れるのが、川島小鳥さんの写真。夜の街や、お酒を飲む人の姿を映しています。なんてことない景色なのに思わず共感してしまう、ドキュメンタリー映画のような臨場感があり、一気にこの本の世界に引き込まれます。

そこから先のページは、12人の書き手による「酔う」ことにスポットを当てたエッセイが続きます。時折差し込まれるミッドナイトブルーのページには、古典文学から切り取った、これもまた「酔う」ことについて考えさせられる詩や散文の数々。

あらゆるタイプの文章がリズム良く繰り返される構成になっているため、さながら酔っぱらったときの思考回路のように、次々とページをめくりたくなります。そして、読み終えた本書をそっと閉じたとき、裏表紙には以下の一文が添えられています。

There is more to life than increasing its speed.
速度を上げるばかりが、人生じゃない。

Mahatma Gandhi


適度な飲酒は仕事の効率を上げるという話もありますが、酔っぱらうということは、基本的には立ち止まるということです。立ち止まって、頭を空っぽにしたり、意味のあることからないことまで思考をめぐらせたり、あるいは過去を省みたり。

もしかしたら「酔う」という瞬間は、人生のセーブポイントなのかもしれません。ひたすら前に進むだけでは、どこかで転んでしまうような気がします。時にはめちゃくちゃで、だらしなくて、どうしようもない夜があるからこそ、また、明日も頑張れる。

「お酒を飲む言い訳を探しているだけだろう!」なんてツッコミはやめてください。それよりめでたいお正月です、明るい一年を願って、ここはひとつ、乾杯といきましょう。

(文・望月竜馬

酔いながら考える
発行:歩きながら考える編集部

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