遊泳舎の本棚 014『よむ処方箋 01 失恋』

みなさんは、失恋した経験がありますか? 失恋した直後は、何もかもがどうでもよいと自暴自棄に陥ったり、「自分には二度と恋愛なんてできない」とうらぶれたり、強烈なダメージを負うことが多いと思います。ただし、失恋も悪いことばかりではありません。

失恋したことで、同じ失敗を繰り返さないように努力するきっかけになります。今まで気づけなかった相手の優しさに気づき、当たり前の日常が幸せに思えるようになるかもしれません。そうすれば、きっと次の恋愛に活かすことができるでしょう。

今、恋がうまくいっている人も、片想いのまま気持ちを告げられなかったり、恋人と別れてしまったり、いくつかの失恋の上に新たな恋を実らせている場合が多いのではないでしょうか。失恋で流す涙は、次の恋を実らせるために、心という土壌に降る雨のようなもの。

この世には、決して無駄な恋なんてありません。そう、失恋だって、立派な恋のひとつなのです。今回は、そんな「失恋」にまつわる一冊をご紹介します。

本書には、失恋にまつわる短歌やエッセイなどが収められています。副題の「よむ処方箋」というフレーズからも分かる通り、失恋の記憶を少しだけ思い出させたり、「失恋とはなんなのか」を読み解いたりする文章の数々が、誰の心にも残る痛みに、苦くも優しくじんわりと染み込んで来るのです。

失恋は、その恋愛が真剣なものであったならなお一層、それを経験した人にとって一生忘れられない出来事となります。だからこそ、失恋の意味を真面目に考えてみることは、失恋の傷がまだ癒えぬ人にとっても、それを乗り越えて次の恋愛に向かっている人にとっても、そして昔の恋愛を思い返す人にとっても、価値ある試みです。

失恋の受けとめ方/羽鳥剛史 より


どの作品も、短いページの中にぎゅっと失恋に対する深い思いが込められています。それはきっと、失恋について筆を執るとき、誰もが自分自身の思い出を無視できずにはいられないからでしょう。書き手の体温の感じられる、説得力のある文章ばかりです。

世界中のすべてが「思い出があるせいで胸が苦しいもの」か「思い出がなくてさみしいもの」に見えてしまう。

失恋とくどうれいん/くどうれいん より


他に、「失恋ソングブック」という曲紹介のコラムなど、バラエティに富んだ作品も。書き手も、歌人やライターを始め、工学者や僧侶など、一風変わった方々まで名を連ねています。年齢や性別、職業といった立場は関係なく、誰もが共感できる「失恋」こそが、実は人類の共通言語なのかもしれません。傷心中の方も、前を向いて歩き出した方も、この小さな処方箋を一度開いてみてください。

(文・望月竜馬

よむ処方箋 01 失恋
発行:襟巻編集室

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