遊泳舎の本棚 017『13歳までにやっておくべき50の冒険』

みなさんは、子どもの頃にどんな冒険をしましたか?

漫画やアニメ、映画の世界のように竜と戦ったり、財宝を発見したりするだけが、冒険ではありません。大切な玩具を空き箱のタイムカプセルに入れて埋めたことや、親戚や友人の家に一人で泊まりに行ったことも、子どもにとっては冒険といえるかもしれません。

私は6歳のとき、いつもは行かない隣町まで自転車で出掛けたことが冒険として今でも記憶に残っています。

本書は、子どもならではの冒険を50パターン提案しているアドベンチャーガイドです。収録されている冒険は「シャボン玉のなかに入ってみよう」「ねころがって星を見よう」「植物を種から育てよう」など、一つひとつは難しいことではありません。ですが、今の子どもたちが日常でやらないことばかりです。

この非日常こそが冒険であり、冒険は生きていくうえで大切な「何か」を気づかせてくれます。

夜が終われば、朝が来る。ぼくらはそれをごくあたりまえのことだと思っているけど、これ以上にすてきなことはない。ぼくたちという存在があるのは太陽のおかげなんだ。その巨大なかがやく星は、想像もできないようなエネルギーをぼくらにプレゼントしてくれてる。それなしでは何ひとつ成長できないだろう。草も、木も、動物も。海や湖の水が蒸発しないから、雲ができないし、雨も降らない。

「ミッション15 日の出と日の入りを目撃しよう」より


本の中には自分の名前や冒険をはじめた年齢はもちろん、50の冒険=ミッションをやり遂げた成果を書き込む欄が設けられており、ただ読むだけではなく、自分でつくっていく本になっています。たとえば、ロープの結び方をマスターして、そのロープの結び目を貼り付けるといった具合です。

また、それぞれのミッションに関連する本のオススメもしており、子どもの知的好奇心を様々な方向に導いてくれるはずです。

自分でつくり上げていく本という意味では、この本そのものがひとつの冒険になっているといえるかもしれません。


大人になり、知識と冷静さを持って振り返ると、他愛のない小さな出来事の集まりに過ぎないと感じるかもしれません。しかし、あの頃に夢中になって冒険した一つひとつが、今の自分をつくっているはずです。子どもの頃に、どれだけ冒険をしているかは、直接的ではないかもしれませんが、その後の人生に大きな影響を与えるのではないでしょうか?

自分の子どもの頃を思い返しながら、自分や友人の子どもに贈っても喜ばれる一冊です。

(文・中村徹

13歳までにやっておくべき50の冒険
著:ピエルドメニコ・バッカラリオ、トンマーゾ・ペルチヴァーレ
絵:アントンジョナータ・フェッラーリ
監修:佐藤初雄(NPO法人国際自然大学校)
訳:有北雅彦発行:太郎次郎社エディタス
ISBN:978-4-8118-0797-3

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