子供の頃、「大人のスピーチはつまらない」と思っていました。
興味のない、真面目な話を延々と聞かされるのは苦痛でしかなかったのです。
大人になって人前で話をすることの難しさを知った一方で、面白いなと思えるスピーチにも出会えました。その多くは外国人のスピーチです。
2020年、最初の「遊泳舎の本棚」は、ジェフ・ベゾスやトム・ハンクス、イーロン・マスクなど、ビジネスや芸術、教育などの分野で成功を収めた12人が卒業式での講演を収録したスピーチ集です。
私自身の趣味であるスポーツを観ていても感じることですが、アメリカの著名人は日本に比べて圧倒的にスピーチが上手いと思います。
自らを多く語らない謙虚な姿勢が美徳される日本との文化の違いもあるのかもしれませんが、時にジョークを交えるなど、聴衆の興味を引きつけて楽しませることを常に意識しているからではないでしょうか。
皆さんの多くは、なぜこんな年寄りが卒業式で講演するのだろうと、不思議に思っていることでしょう。その理由は明らかです。まだ死んでいないからです!
「チャールズ・マンガー(バークシャー・ハサウェイ副会長)成功の秘訣は『学習マシーン』」より
なぜ私が講演者に選ばれたのか。それは私にもよく分かりません。大学の渉外部が、何か寄付してもらえると思ったからではないことを祈ります。
人々に興味を持ってもらうこと。これは私が本づくりにする際に、とても重視する要素のひとつです。せっかくの良い内容も興味を持って読んでもらえなければ、届くことはないからです。
もちろん、本書で紹介されている12人は各分野をリードする人たちばかり。
彼らの語る、生い立ちや決断、成功体験は、学ぶところがたくさんあります。
たとえばアマゾンの創始者であるジェフ・ベゾスは、彼自身がインターネット上で本を販売するというアイデアを得た際にチャレンジするかどうか悩んだというエピソードを例に、人生の岐路に立ったとき、自分で選択することの重要さを説いています。
思い切って予想してみましょうか。80歳になった皆さんは、一人で、自分の人生ストーリーを静かに振り返っています。そのとき、最も濃密に思い出すのは、自分で「選択」したときのことです。この一連の「選択」が最も大きな意味を持ちます。
「ジェフ・ベゾス(アマゾン創始者) 賢さと優しさ」より
結局のところ、私たちの「選択」こそが私たち自身を形づくっていくのです。
古代より、先人の知恵は言葉によって受け継がれ、人類は少しずつ賢くなってきました。情報化社会といわれる現代は、そのスピードが劇的に速くなっています。
同じ時代に生きる成功者からエネルギーをもらうことができる。そんな金言が詰まった一冊です。
(文・中村徹)
『巨大な夢をかなえる方法 世界を変えた12人の卒業式スピーチ』
著:ジェフ・ベゾス
訳:佐藤知恵
発行:文藝春秋
ISBN:978-4-16-390887-2