遊泳舎の本棚 013『世界一美味しい煮卵の作り方』

本をつくる上で最も大切な要素はなんでしょうか? もちろん、たくさんあると思いますが、ひとつ挙げるとするなら「タイトル」ではないかと思います。タイトルは、その本を通して伝えたいことが詰まっているはずですし、どんなに内容が良くてもタイトルが駄目だったら、手に取ってもらうことすらできないからです。

今回は、私がタイトルに魅かれて買った一冊をご紹介します。

本書のタイトルは『世界一美味しい煮卵の作り方』。カバーにも煮卵の写真と共に大きな文字で、そう書かれています。一見、「煮卵で一冊の本にするなんて、どんなこだわりレシピ本なんだろう?」と興味を引き付けられますが、煮卵は100掲載しているレシピのひとつに過ぎません。他にもパスタやサラダなど多種多様なレシピが紹介された総合的なレシピ本なのです。

このタイトルは書店において読者の心を掴むキャッチーさがありますし、なにより著者と編集者が思う、この本のストロングポイントなのだと思います。強みを前面に出したことで多くの読者を掴んだ好例だと感じさせられました。

ここまでタイトルが素晴らしいという話をさせてもらいましたが、本の内容も決してタイトル負けしていないのが、本書のすごいところです。

私を含め、「自炊はしても手間暇かけて、こだわった料理を作ることはしない」という人は一定数いると思いますが、この本で紹介されているのは、最短1分で作れる手軽なメニューばかり。しかも、わかりやすくシンプルな内容になっています。

また、表記されている分量は1人前。材料費も1円単位で掲載されているので、一人暮らしの人が非常に使いやすいです。

せっかくの料理へのやる気を削ぐ原因になる「よくわからないクセに高い食材」を全て排除。食材はスーパー等で購入できるものに限定。
表記や構成も可能な限りシンプルに。料理初心者の最大の敵である「適量」「少々」といった曖昧な表記も一切なし。全部具体的な分量で表記。

「まえがき」より


時間と手間とお金をかけて、美味しい料理を追求するのも素晴らしいことです。しかし、限られた中で、気楽に美味しいものを食べられるのも嬉しいことだと思います。たまには楽をしたい人、いつも外食や惣菜で済ましている人の食卓を少しだけハッピーにしてくれる、そんな一冊だと思います。

(文・中村徹

世界一美味しい煮卵の作り方 家メシ食堂 ひとりぶん100レシピ
著:はらぺこグリズリー
発行:光文社
ISBN:978-4-334-03973-8

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