「10歳までにボールペンを分解したことがあるかどうかで、理系か文系かわかる」という話を聞いたことがありますか?
私は出版編集者という文系っぽいイメージのある仕事を生業にしていますが、子供の頃は物の構造や内部がどのようになっているのか気になってしまう質で、壊れた雑貨や機械を捨てる前によく分解していました。分解が好きだった理由は、それで何かを作りたかったからではありません。仕組みを理解することで、物への愛着が強まると感じていたからです。
今回ご紹介する本は、ピラミッドやピサの斜塔、姫路城といった建築物から、グランド・キャニオンやヴィクトリアの滝、富士山などの自然物に至るまで、100の世界遺産の内部がどのようになっているのか「断面図」を用いて紹介した『世界遺産100断面図鑑』です。
本を開くと、わかりやすく、優しいタッチで描かれたイラストによって、世界遺産とその内部の構造が一目で理解できる構成になっています。
また、ペルーにある有名な世界遺産「ナスカの地上絵」が長い年月を経ても消えることのない理由など、かゆい所に手が届くような情報もしっかりとカバーされています。
ナスカ地方の年間降水量は25ミリにも満たない。そんな乾燥した砂漠地帯だったため、洪水による土砂の流出がなかったからだ。
「第2章 アメリカ大陸の世界遺産 ナスカの地上絵」より
次々と新しい物が登場する現代では、つい表面的な魅力にばかり目を奪われがち。しかし、内部の構造を知ることでこそ、外見の美しさの本当の理由を知ることができ、物への深い愛情につながっていくのではないでしょうか。
この本の狙いは、数ある世界遺産のなかから100を精選し、これまであまり試みられたことのない、断面を通して、いわば遺産の内部や成り立ちを通してその表面の魅力を探ることにある。
「まえがき」より
国や時代を超えて、人類に愛される世界遺産。その断面図を通じて、物事の本質的な魅力について考えてみるのもよいかもしれません。
(文・中村徹)
『世界遺産100断面図鑑』
監修:中川武
発行:宝島社
ISBN:978-4-8002-8486-0