はじめまして。私は都内の某書店に勤める「セロ弾きの書店員」です。
この連載では、書店員がお客様から受けるお問い合わせについて解説させていただきます。読者のみなさんを、少しでも書店通に近づけられれば幸いです。
みなさんは、書店で店員さんに本を探してもらおうと声を掛けた時「お探しの本は書籍ですか? 雑誌ですか?」と反対に質問されてしまった経験はないでしょうか?お客様の中には、この質問の意図を理解して、すぐに答えていただける方もいらっしゃいますが、多くの場合「コイツは何を言ってるんだ?」という怪訝な表情が返ってきます。
書店業界に足を踏み入れるまで、私自身もこの質問の意味がわからなかったので、この気持ちはよくわかります。「書店に買いに来たのは『本』であるわけで、『書籍』だの『雑誌』だの言われてもわからないわ」と。
なのに、なぜ書店員はそんな“ちんぷんかんぷん”なことを訊いてくるのか? それは多くの書店において書籍と雑誌の在庫検索方法が違うからなのです。
◆書籍と雑誌の違いは定期刊行物かどうか。
雑誌とは、「週刊」「月刊」など主に定期刊行されているものを指します。よく大きいサイズの本は全部雑誌だと勘違いされがちですが、大判の参考書や楽譜など、定期刊行されないものは基本的に雑誌ではありません。逆にサイズが小さかったり、ハードカバーだったりと“雑誌っぽくない本”でも定期刊行物であれば雑誌に属する場合があるのです。
では書籍とは何か。簡単に言ってしまうと、”雑誌以外の本”です。みなさんが普段読まれている小説や漫画の単行本、参考書や写真集などは書籍に分類されます。遊泳舎から出版されている『悪魔の辞典』『26文字のラブレター』なども書籍です。
つまり本の中には、書籍と雑誌の2種類があり、定期刊行物が雑誌、それ以外が書籍というわけです。
◆バーコード2段が書籍、1段が雑誌。
みなさんも書籍の裏側に2段バーコードが印字されているのを見たことがあると思います。このバーコード、上段がISBN、下段がJANコードと呼ばれるものです。
対して定期刊行されている雑誌の裏面を見てみますと、こちらはバーコードが一段しかありません。これはJANコードであり、雑誌にはISBNコードはないのです。その代わりにバーコードない5桁の雑誌コードというものが付属しています。言ってしまえば「書籍はバーコードが2段、雑誌は1段」。これが書籍と雑誌を見分ける1番楽な方法ということになります。
ちなみに事前にISBNコードを新聞広告やAmazonなどのネット書店などで調べてご用意頂けると書店員は物凄い速さでお品物をご用意することもできます。
とはいえ、もちろん事前にきっちり下調べしてからご来店というのもお手数ですし、ほとんどのお客様はまだ見ぬ本との出会いのためにご来店くださっているわけなので、裏表紙や、そこに印刷されているバーコードの数なんて知るわけもありません。なんとなくタイトルだけで訊いてみるというのも大歓迎でございます。
◆何はともあれ書店員にお尋ねを。
もしも冒頭の質問「お探しの本は書籍ですか? 雑誌ですか?」に対する返答に困った際は、笑顔で「わかりません」とだけ返してあげてください。
書店員も「コイツは何を言ってるんだ?」の顔は結構堪えるものがあるのです。書店員も専門知識を披露していじわるをしたい訳ではありません。いかに迅速にお客様がお探しの本をご用意するかの勝負の中で、ヒントの一つとして止むを得ず訊いてしまうのです。
書籍か雑誌かわからなくても両方を検索して、書店員はきっとお探しの本を見つけて参ります。何はともあれお探しの本がありましたら書店員のお尋ねください。
第1回はこの辺りで終わりとさせていただきます。お客様のお役に立てるような、あるいは話のネタになるようなものになっていればと思います。またこのコラムでお会いできますように。
セロ弾きの書店員(せろひきのしょてんいん)
何となくバイトとして書店業界に入って気付いたら3店舗目、気付いたら社員になっていた。雑誌担当。文芸書担当を兼任していた際、遊泳舎の書籍に出逢い惹かれる。すぐに職場を辞めて遊泳舎に転職したいと言いはじめるため、書店名は明かせない。