第5回 検索機で「在庫あり」なのに、書棚にないのはなぜ?

・第1回 「書籍」と「雑誌」って何が違うの?
・第2回 進化を続ける本の金券「図書カード」
・第3回 書店に関わるすべての方の協力で成り立っている営業再開。 ~コロナ禍書店奮闘記①~
・第4回 お客様のいない書店で書店員が行っていた作業とは? ~コロナ禍書店奮闘記②~


書店でお目当ての本を探そうと検索機で調べて「在庫あり」だったのに、該当の書棚で本が見つからない……。そんな経験はありませんか? どうしても手に入れたくて、何軒も書店をハシゴした後だったらとしたら、とてもがっかりしてしまいますよね。

今回は、「検索機で『在庫あり』の表示になっていたのに、書棚にはその本がない」というケースについて、店内の他の場所になら在庫があるのか、ないのか、どうしてこのような問題が起こってしまうのか、を書店員の立場から(言い訳のような)ご説明をさせていただければと思います。

店内に在庫があっても店頭に出ているとは限らない。

検索機で在庫あり、書棚になし、そして店内に在庫あり、というパターンでは以下のような可能性が考えられます。

一つ目は、「入荷はしているが、まだ品出しが終わっていない場合」です。書店には日々沢山の商品が入ってきます。小規模の店舗などではジャンル担当者が不在だったり、他の業務で品出しに手が回っていなかったりと、まだ店頭に陳列できていないケースも少なからずございます。この場合、書店員にお声がけいただければ、対応できることもございます。

二つ目、これはお売りできる在庫がある、と言えないかもしれませんが、「他のお客様の『お取り寄せ』『お取り置き』の商品が検索データに反映されている場合」が考えられます。書店によってはこれらの商品を検索機の在庫データと別に管理している店舗もありますが、データ上で一緒になっている場合は、別に保管している商品を指して「在庫あり」表示になっているというわけです。人気の商品ほど、電話での取り置きなどされるお客様が多いもの。話題の新刊が「在庫あり」だったのに店頭になかった、という場合はこの可能性が高いかもしれません。

他にも「他のお客様が手に取った本を別の場所に戻してしまった」なども考えられます。

◆そもそも店内に在庫がない場合。

逆に店内のどこにもない場合としては次のようなケースが想定されます。

まずは、「すでにその商品を出版社に返品してしまっている場合」です。現場の書店員が返品の処理をしてから在庫データの反映までに、書店によっては少し時間がかかる場合があります。その結果として「商品は返品済みだが在庫表示されてしまう」という事態が起こるわけです。

次に考えられるのは「万引き被害に遭っている場合」です。この場合、残念ながら書店としても万引きに気づかない限りはデータの修正自体ができず、全く対応ができません。書店における万引き被害は日々起きています。取次を通した書籍の場合、一般的に書店に利益は1割程度と言われていますから、一冊万引きされてしまうと十冊売ってやっとその損失を取り返せるということになります。その上在庫までずれてしまうので、盗る方は出来心でも書店としてはたまったものではありません。

このように在庫表示はされても実際には販売できないケースというのは一定数あります。それでも店頭に出てないものをお出しできる可能性、またお取り寄せ可能な場合もありますのでお気軽にぜひ書店員までお問い合わせくださいませ。

セロ弾きの書店員(せろひきのしょてんいん)
何となくバイトとして書店業界に入って気付いたら3店舗目、気付いたら社員になっていた。雑誌担当。文芸書担当を兼任していた際、遊泳舎の書籍に出逢い惹かれる。すぐに職場を辞めて遊泳舎に転職したいと言いはじめるため、書店名は明かせない。

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