第4回 お客様のいない書店で書店員が行っていた作業とは? ~コロナ禍書店奮闘記②~

・第1回 「書籍」と「雑誌」って何が違うの?
・第2回 進化を続ける本の金券「図書カード」
・第3回 書店に関わるすべての方の協力で成り立っている営業再開。 ~コロナ禍書店奮闘記①~


ありがたいことに書店にも「常連さん」というのはいらっしゃるもので、特に雑誌を担当していると毎号楽しみにしてくださってるお客様と出会ったりすることもあります。新型コロナウイルスによる休業から営業を再開してからは、そんな常連さんたちが「開くのずっと待ってたんだよ」なんて言ってくださるので、とても励みになるのです。

先日、そんな常連客の方から「自粛中はゆっくり休めた?」なんて声をかけていただきました。「お気遣いありがとうございます」とお答えしましたが、実は「ゆっくり休みたかったです……」というのが正直なところです。

「え? じゃぁ、あんたたち自粛中お客もいないのに何してたんだ」と。そうです、実は書店にお客様はいませんでしたが、書店員の仕事はゼロにはならなかったのです。

先の見えない開店に備える日々。休業中でも新刊はやってくる。

緊急事態宣言中に休業している書店は数多くありましたが、そんな中でも出版社も出版流通を担っている取次もしっかり営業されていました。そのため、新たに発売される本は日々、書店に届けられていたのです。

しかも、単に「荷物を受け取れば終わり」という話ではありません。休業中は、先の見えない状況でしたから、いつ「明日はお店を開けあられる」なんてことになるかわかりませんでした。その時、数週間分、数か月分の新刊が箱に入ったままだったら営業なんてできません。そのため、受け取った新刊はすべて箱から出し、書棚への配架作業までしっかり終わらせなければならなかったのです。

出口の見えないトンネルをひたすら歩き続けるような環境だったということもあり、精神的にも辛い状態でした。

最少、最短での作業を繰り返すも、販売機会なく返品する悲しさ。

「まぁでも接客ないから陳列作業だけなら余裕でしょ?」なんて思われるかもしれません。違うんです。感染症対策のため、「出勤する人数は常に最低人数、勤務時間もできるだけ短く」という環境下での作業は戦場といっても過言ではありませんでした。

もちろん、担当ジャンルによって業務量に多少の差はあります。しかし、私の担当ジャンルである雑誌は、一つの銘柄で多ければ200冊ほど入荷されることもあったり、しかもそれに付録付けをしなくてはいけなかったりするのです。

普段であれば、仕入れ担当者が何人かで荷物をジャンルごとに仕分け、雑誌班4人がかりで付録付けをつけ、閉店後に次の日の雑誌を出すスペースを作り、発売日朝に商品を展開します。しかし、「密」を避けるため、できるだけ短時間に一人でこなせというのですから自粛太りとはなんぞやという感じです。もうゲッソリです。各ジャンル担当者輪番で回していたので毎日でこそありませんが、出勤する度にそびえたつ雑誌台車の山に怯える日々でした。

そして、次の号が出た雑誌を返品するという作業も。何より悲しいのが、この作業でした。読者に読んでもらうために生まれた本が、店が開店せず販売する機会が与えられないまま出版社に戻っていかなければならないのですから。

正直言って自粛期間中は、とても辛い期間でした。しかし、営業が再開してお客様から「待ってたよ」の声を聞くと、やっぱり書店員をやっていてよかったなと思えます。ぜひ本が読みたくなったらお近くの書店にお立ち寄りくださいませ。

セロ弾きの書店員(せろひきのしょてんいん)
何となくバイトとして書店業界に入って気付いたら3店舗目、気付いたら社員になっていた。雑誌担当。文芸書担当を兼任していた際、遊泳舎の書籍に出逢い惹かれる。すぐに職場を辞めて遊泳舎に転職したいと言いはじめるため、書店名は明かせない。

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