恋愛や仕事、人間関係、心と体……。そんな現代人が抱える悩みに答えるのは、物語の世界から飛び出してきた“おひめさま”たち。「人生の主役」をつとめるアナタに、ヒロインとして物語の世界を生き抜いたお姫様が生き方のヒントを教えてくれる連載『57人のおひめさま 一問一答カウンセリング 迷えるアナタのお悩み相談室』。第4回も、人間関係にまつわるお悩みです。
回答者:夜長姫
国:日本/出典:『夜長姫と耳男』
(あらすじ)
長い耳の青年・耳男は「夜長姫の護身仏を彫れ」と命じられる。姫は、耳男の馬顔と耳を馬鹿にして、耳を奴隷に切り取らせた。耳男は姫を憎み、姫の護身仏を馬顔の化け物にしたが、姫は気に入ったと言う。姫は疫病で人が死ぬと喜び、耳男に蛇を吊るさせた。「姫は村人の死を願っている」と気づいた耳男は、姫を抱きしめて刺す。姫は「好きなものは呪うか殺すか争うかしなきゃ。今、私を殺したように」と言い残し、笑って死んだ。
お悩み:人に依存しがちで、友人からも恋人からも「重い」と言われます……。
夜長姫の回答:愛されたいのねぇ。自分より相手を愛せれば「愛されなきゃ寂しい病」を克服できるわぁ。
依存する人は他人から必要とされなきゃ生きていけないの。存在意義を他人に委ねて「もっと私を愛して、もっと私を欲しがって」とすがっている状態ね。底なしの承認欲求だもの、そりゃ鉛のように重いよねぇ。
いろんな決断を友人や恋人に委ねて、他人に尽くすことでダメな自分が尊い人間になれる気がしてない? 奉仕して「自分の価値や評価を上げたい」「必要とされたい」って願ってない? 「こんなにやったんだから、私のこと好きになってよ」って、愛の見返りを求めてるんでしょ? 相手に好かれたくて、求められたくて尽くしてる。それって結局、自分のことしか愛してないわ。打算が透けて見えるのよぉ。
あなたが欲しい言葉は「好き」と「必要」。だれかに好かれて、必要とされているうちは喜んで生きていけるの。でもだれからも好かれず求められなかったら、生きている意味がわからなくなる。だってあなたはありのままの自分を受け入れていないし、好きじゃないから。今の自分は息を吸って吐いているだけじゃ価値がないって思ってるのねぇ。だれかのお墨付きがなきゃ不安でたまらないの。
あなたは人を愛したいんじゃなくて、愛されたいだけよ。だからずっと他人の目を気にして、言いなりになって、足元に這いつくばって、少しでも愛されようとする。そんなの「重い」って蹴られておしまいよぉ。存在意義を他人に丸投げしている限り、自分に呪いをかけ続けるわ。あなたの価値はあなたの中にあるの。それなのに、なんで自分の価値を他人の中に移植しようとするの? そんなの拒絶されて当然よぉ。だれだって自分の体に異物を押し込まれたら気持ち悪いでしょ? あなたが自分を受け入れなくてどうするのぉ?
あなたが存在する理由はあなたが決めるの。自分の脳みそで考えて、自分の体で動いて、自分の心で命を燃やすのよ。愛をもらおうとひざまずく乞食は卒業して、愛を与える側に回りなさい。だれかのために見返りを求めず行動できれば、息を吸って吐いているだけで価値ある人間になれるわ。本当に大切なものは代償なしには手に入らないのよぉ。心は何度だって生まれ変わるから、依存しきった心を刺し殺して、生まれ変わりなさい。
盲目的に尽くすのは自己愛。 独りよがりな愛の押し売りよぉ
他にもさまざまなお悩みに、お姫様たちが答えています!
『57人のおひめさま 一問一答カウンセリング 迷えるアナタのお悩み相談室』
文:秋カヲリ/絵:momomosparkle
定価:本体1600円+税
判型:四六判変形(ソフトカバー)
頁数:240P
発売日:2021年7月16日
ISBN:978-4-909842-08-4
秋カヲリ(あき かおり)
1990年、茨城県生まれ。東京女子大卒、都内在住。ADHDのパンセクシャルで、作家・ライター・コピーライター・心理カウンセラーとして活動する一児の母。恋愛依存、育児鬱を経験し、心理学を生命線にして今に至る。ADHDゆえに受験勉強や会社員生活などのルーティーンが極端に苦手で、ITベンチャー・広告代理店・化粧品メーカー・社史制作会社を転々とするが、いずれも1年前後で退社した会社員不適合者。感情や思考を整理できる執筆が精神安定剤で、幼少期から偏愛し生業にする。女の生きづらさやADHDの不適合感とうまく付き合うため心理カウンセリングを実践し、現代女性のゆらぐ心を支えるコラムを多数執筆している。
Twitter: @hagiwriter
Instagram: @akikawori
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momomosparkle(もももすぱーくる)
ハッピーでポップなイラストが特徴のバイリンガルイラストレーター・漫画家・エッセイスト。小さな頃から多様な文化に触れながら育ち、カリフォルニアでアートとアニメーションを学んだ後、女子美術大学を卒業。人と話すのが大好きで、かわいいものやおいしいもの、新しいものに目がない THE・てんびん座。著書に『ハピドラ! マンガで紹介 気分ぶちアゲ海外ドラマ』(柏書房)がある。挿絵やウェブ漫画のほか、ドラマレビューやコラムも人気。
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